Farmhouse Fruit Cake

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いつもご愛顧ありがとうございます。
誠に勝手ながら下記日程を夏季休業とさせていただきます。

≪夏季休業期間≫
2023年 7月1日(土) ~ 2023年 9月中旬頃まで(再開日時は気候をみてお知らせいたします)

お客様には大変ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承の程お願申し上げます。


長期のお休みをいただきまして、誠にありがとうございます。
この期間に基礎から学び直ししております。
以前イギリスから持ち帰ってきたレシピ本を読み直しています。

イギリス菓子のケーキの中で一番有名なのは「ヴィクトリアサンドイッチケーキ」かなと思います。
私が持っているレシピ本にはヴィクトリアスポンジは小麦粉・砂糖・バター・卵が同割で配合されていて、イギリスのケーキ分類では”リッチケーキ”に属しています。クリスマスのドライフルーツや洋酒がたっぷり使われている「フルーツケーキ」もリッチケーキ属です。

同じように生地にドライフルーツを混ぜ込んで焼き上げたケーキでも、
リッチには分類されずに”素朴系”のレシピもあります。
配合が経済的になり、作り方も異なります。

イギリス菓子のレシピを眺めていると、生地にスパイスとドライフルーツ(特にレーズン)を混ぜ合わせたケーキが無数にあってそれぞれに名前があり、、、若干の配合の違いはあれど、正直何が違うのかわからん…という感じになります。

分からんので、作ってみようと思います。

Farmhouse Fruit Cake
Farmhouse Fruit Cake


『Farmhouse Fruit Cake』

素朴系のレシピから、
名前からして“ザ・素朴”ですね。とても心惹かれるネーミングです。

所有している1950年のレシピ本より

小麦粉は全粒粉を使用し、ミックスドライフルーツや柑橘の皮、卵、砂糖、ほんの少しのスパイスと、”dripping”を加えて混ぜ合わせて長時間焼きます。

なるほど簡単だ、しかしながら ”dripping” とはなんだ?
dripのing系?滴るもの??
名前の雰囲気と配合からおそらくは油脂かな

辞書で引いてみると、
ロースト料理のときに肉から出る脂で主に牛肉のそれ(または豚)。

なんと、、、肉をローストした際に出る副産物の油脂のことでした。

ちなみに補足で、
その脂と肉汁の煮凝り的なものを混ぜて塩を加えトーストに塗ったものは、農場で働く人たちや子供たちにとって冬の夜のティータイムやスケート後の定番のおいしいごちそうであった。
と書いてありました。
”dripping” という単語ひとつで当時の食文化や生活まで見えてくるのが、感激です。
現在ならローストした時に出る過剰な脂は Not healthy!といった感じで取っておいて再利用などしないでしょうね。いや、まだするのかな?どうだろう…

よっしゃ!じゃあまずは”dripping”作りで肉焼くぞ!!ローストビーフじゃ!

と、やりたいところなのですが、
ごめんなさい、今回は割愛いたします。


”dripping”の代用として手軽に買えるラードを使ってみます。
ただ、ラード100%は勇気がないのでバターと半々にしました。

そのほかの材料、分量、作り方も本の記載通りに作ります。
昔のレシピ本は写真もなければ5行程度の本当に簡潔な作り方のみなので、材料を混ぜ合わせた生地の仕上がりを”かなり柔らかい状態”としか表記がないので、卵を加えた後に牛乳で硬さを調整がどのくらいなのか?耳たぶ位なのかホットケーキのような流動状にするのか。
材料の卵の指定がただの egg ではなく small egg だったので、ここから予想するに大きいサイズの卵を使うと柔らかくなりすぎるので小さめを加えてねという意味なのかな?流動状になるギリギリ手前までの状態にして焼いてみました。

水分量が通常のケーキに比べると少な目なのもあってか、きれいに盛り上がって焼きあがりました。

カットしてみました。
焼き上がりのザックリ感、見た目はかなり好みです!


沢山あるフルーツケーキを理解するためにも、
追加でもういっちょ素朴系フルーツケーキを作ってみました。

『Spiced Lunch Cake』

同じレシピ本より
こちらも分量変えずに記載のまま作りました。

小麦粉はセルフライジングフラワー、レーズンとデーツ、油脂はこちらはdripping or other fat とのことなのでバターで、そして名前の通りスパイスをたっぷりと!またこのケーキのもう一つの特徴はゴールデンシロップも使うこと。
比較のためにこちらはローフ型で焼きました。
こちらも見た目すごく好きです。ドライフルーツの配合量がベスト!おいしそう!

今回は上記2種の素朴系フルーツケーキでティータイムです♪

ミルクティーを淹れて、素朴系のケーキなのでバターを添えてみました。

見た目だけだと違いが全くわかないですね。
同じケーキを型を変えて焼いただけのように見えます。
それもそのはずで、分量の違いはありますが使用している材料も作り方もほぼ同じです。

『Farmhouse Fruit Cake』
見た目通りに味わいも素朴です。
とても軽く外はさっくりして中はふわっとホロホロ系でドライな感じはないです。
ふんわり控えめに香るスパイスとドライフルーツの甘みが優しいです。
肝心のdrippingの代わりに入れたラードは焼きたての時はちょっとクセがあるように思いましたが、翌日食べると馴染んでクセは無くなっていました。バターだけとは違う動物性の油脂の味わいが程よくあります。
本当に全体的に優しい味で、なんか、懐かしい。というか食べたことある味に似ている。
そうだ…!これは甘食!甘食に食感も風味も似ている!
私は甘食大好きなので、このケーキも懐かしさ感じる優しい味がとても好きです。
本当のdrippingを使用した場合にはもっと肉のうまみ、塩気、一緒にローストした野菜のうまみや焦げた香ばしさなども味に含まれてくるのかなと想像します。

『Spiced Lunch Cake』
一口食べて、見た目からは感じない強いスパイスの香り!
脳裏にカレーが浮かび上がってくるほどにスパイシーです。
ゴールデンシロップのおかげでふわっとホロホロだけれどもしっとり感もあります。
しかしながらスパイスが強くてドライフルーツや生地自体の味わいがよくわからない…
個人的にはもう少しスパイスを控えた方が好みですが、このパンチ力のあるスパイシー系ケーキはイギリスで食べ歩きをしてると出会うので、イギリスらしいといえばそうなのかも?しれません。
人によってはクセになる味。

そしてどちらも濃いめに入れたミルクティーとの相性は素晴らしいです!
最高のお茶の時間です。

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2種の素朴系フルーツケーキを食べてみて、
『Spiced Lunch Cake』の配合が個性的であったこともあって、作り方は同じ、見た目も全く変わらないようなものでも食べてみると味わいが異なって勉強になりました。
ただ、大きく違いがあるかというと無関心な人には同じものだと判断されてしまうかなと思います。

フルーツケーキというと、しっとりどっしり濃厚!なイメージのケーキですが、
軽くふわっとホロホロなフルーツケーキもあること、こっち系はフルーツケーキというかフルーツブレッドという名前の方がしっくりくるかもしれません。

また、レシピが簡潔な分、作る人の感性で味わいが変わることは間違いないです。
今回で言えば、生地の硬さ調節の牛乳の量をもっと減らしたり増やしたりするとかなり食感や見た目が変わって味わいも変わりそうです。

昔のレシピ本は現在のように写真や作り方を事細かく丁寧にのせてくれているのとは違い、悪く言えば説明不足ですが良く言えば余白があります。
だからこそこれが正解なのか?というのがあいまいになって、正解を求めると膨大な資料と時間と経験が必要になってきますが、はたして正解はあるのか?とも思います。
このケーキはこういうものです!というより、これが基本的なレシピでですよ~こんなのもありますよ~という感じなのかなと。
家で作ってみて、そこから自分や家族の好みに合わせて少しづつカスタマイズしていって自分なりの『Farmhouse Fruit Cake』が完成し、それが正解となるような。

お菓子作りの名手による力作だったり、誰かの失敗から始まったりしてその地域に馴染み愛され地方の銘菓にまでなるフルーツケーキ、
家で代々受け継がれていき、時に時代に合わせて少し改良されたりして家の味として大切にされるフルーツケーキ、
たくさんの種類があることについて今回なんだか少しだけ分かったような気がします。

私がたくさん種類があるフルーツケーキに混乱するのはただ馴染みがないだけで、馴染みがあるもので例えると日本を旅行をすると各地域に温泉まんじゅうは必ずあって、見た目同じだけどうちのは他と比べて蒸してる泉質が違う!あんこが違う!皮が違う!みたいな感じかな~と思ったり。
違う違う、全然違う、身近なもので例えて理解したような気になるなと怒られそうです。
なんとなくですが、このフルーツケーキはこう!と固く考えずに、そのケーキを尊重するのはもちろんの事、もう少し柔軟に身近な感覚でとらえていくと理解ができそうな気がします。概念を捨てて飛び込む勇気が何事にも大事ですね。まさかのフルーツケーキ作りでそれを思い知らされるとは。
素朴系から濃厚系、幾多もあるフルーツケーキの奥深き世界の探求はまだまだ序盤です。

drippingのような生活に密着したすぐ手元にある材料で作るお腹と心を満たすケーキ
その背景も含めてすごく好きです。
全粒粉を使用しているのも自分たちが育てた小麦を胚芽もふすまも無駄にせずに食べる、現代で考えると大変贅沢なケーキだなとも思います。

『Farmhouse Fruit Cake』個人的に素朴な味わいが大変気に入りましたので、本来のレシピを大切に少しだけ変えさせてもらって自分なりの『Farmhouse Fruit Cake』が完成したら良いなと思います。